老舗企業ブランディング事例

今回のミッション/ご依頼の経緯

天下の台所大阪にて、もうすぐ創業100年になる老舗のお麩屋さん。
職人たちの繊細な拘り。卓越された技術力。お麩づくりに対する熱い魂。
それらがビジュアルとして可視化されていない為、見合った正当な評価を受けていなかった。



現在創業94年。記念すべき100周年に向けて、今まで取り組んできたこと、歴史全てを一回綺麗に紐解き、棚卸して整理整頓し、
伝えきれていないポイント、眠っている良いところを見つけ出し、「きちんと評価されるデザインを施して欲しい 」
という代表の中田社長様からのご依頼でした。



100周年はもちろん、食卓でいつまでも愛されるようなお麩を目指して、
今後150年、200年と永続する老舗企業に成るべく、リブランディングプロジェクトがスタートしました。

思考のプロセス

桶屋のブランディングは兎にも角にもヒアリングからスタートします。
自社の存在意義、今まで大切にしてきたもの、買ってもらいたい顧客像、逆に買ってもらいたくない顧客像など、
何十項目にも渡るヒアリングシートを考えていただき、質問攻めが始まります。



老舗企業様のヒアリングには毎回「宝」がたくさん眠っています。
その「宝」は大きく2つのパターンに分かれています。
1、本当に眠っていたパターン
2、当事者にとっては至極当然パターン



特に2のパターンは毎日見ていることや毎日作業していることなので
企業側としてはどうしても見つけることが難しく、また客観的にジャッジすることが出来ません。

だからこそ真っ白な脳を持った僕たちが必要なのです。 本当の良質なアイデアやヒントはここから生まれるケースが多いのです。



また、企業が大きくなってきたり、歴史が長くなってくると凝り固まって脱却できないことがあります。
しかし、業界のことをあまり知らないが故に言えることも多くあります。
そして、外部だからこそズバッと言えたりもします。
お世辞やおべっかは弱体化を生みます。
良いものは良い。良く無いものをいつまでも祭り上げる必要はありません。

足りないものは「デザイン」だけ。

草野の朝はグルテン作りから始まります。
気温・水温・時間経過により変化していきます。このグルテンはまさに生き物なのです。
麩にとってベストな状態を長年の経験から見極め、グルテンを製造していきます。
さらに焼麩職人はその日焼く麩にとって、どのタイミングで出来たグルテンが良いのか見極め、焼き工程に入っていきます。
これらの要素が全て兼ね備わることで最終的な「食感」と「美味しさ」が決まります。
草野の麩にはきちんとした美味しいお麩の理論と長年の職人の勘が培われているのです。



このように実際に見学しながら探っていきます。グルテン製造工程、練り工程、焼き工程、梱包工程。
この初回の工場見学をしている時点でも既に表現できていない「もったいないポイント」がたくさん浮かび上がって来るのです。



また更に良いところを発見するためにもメンバー全員が集まりお麩の討論会も行いました。
自社製品のお麩を全て並べ、出汁によってどう味が変化するのか?お麩を入れるベストなタイミングはいつか?など
徹底的にお麩の検証をしました。



「草野の麩は出汁をよく吸い込む」
「出汁は大阪の文化」
「口に入れてすぐ崩れるにはNG」
「コシがありすぎるのも不味い」
「口に入れてふわっと、とけそうでとけないお麩が一番うまい」



面白い発見・ひらめき・アイデアとは未来の「点」。
その点の連続がいつの間にか面へと繋がる。
その面こそがブランドの軸へと成っていくのです。




ヒアリングすればするほど「宝」がいっぱい出てくる。
その製法や拘りは本物で真面目。真似のできない領域が多く存在する。
これを伝えないことは企業にとって大きな機会損失です。





くさのの麩の在り方、味、特徴について徹底議論と実験


























大切なことは「残し方」の塩梅

よくブランディングの案件で「全部新しく一新したい!」とクライアント様からご要望があります。
しかし、僕たちはそれをそのまま鵜呑みにしません。



要は何でもかんでも変えればいいものでは無いのです。大切なことは塩梅。「老舗」の残し方に妙味があるのです。
変える必要のないものを変えると今までの良さが消えてしまい、大変な事になります。
最近なんでもかんでも「リブランディング」といって変な様になっているデザインをよく目にするようになりました。
「古い掛け軸の復元」のように1つ1つ丁寧に扱わなければ、一瞬で良さが消えて無くなる可能性があるからです。



その老舗企業の本質を見抜けず、歴史や文化という「アジ」を残さずにむやみにデザインを変化させると
今までの歴史が軽くなり、会社の良いところを完全に潰してしまいますので
非常にセンシティブに扱わなければならないポイントです。

デザインのプロセスと解剖

<100年前のロゴに帰ってきた>


お打ち合わせ時、いつも応接間に飾ってあった古い看板。
創業者の想いの詰まったシンボル。このマークを使わずして原点回帰は図れない。



<コンセプト>

原点回帰。
天下の台所、大阪。この地で88年お麩作りに取り組んできた、
くさのの麩。

京でもなく、金沢でもなく、食の都 大阪からもう一度お麩を伝えていく。

お麩の原料でもある小麦粉は、「粉もん」としても大阪で親しまれてきました。
千利休の作っていた小麦粉をベースに作られた茶菓子は
「麩の焼き」と呼ばれ、お好み焼きの原点にもなっています。

お麩とよく馴染む「出汁」も大阪の文化でもあります。
出汁の旨味がぎゅっと染み込んだ、『とけそうでとけない麩』を
私たちは伝統を引き継ぎ、今後もずっと作り続けていきます。



このロゴは創業当時のマークであるマルフをベースとしてつくっています。
もう一度原点に戻り「くさのの麩」の文化と歴史とプライドを背負って日々精進するんだ。という
「心の道しるべ」
としてのロゴです。

<くさのの麩という通り名(通称づくり)>

今まで何かを象徴する「通り名」と呼ばれるものが無かった。
例えば「簿記の大原」「ヤマザキパン」「洋服の青木」など〇〇といえば●●と
すぐ連想させる通称をつくることで言葉を流通に乗せるべく、お麩のブランドネームとして
「天下の台所大坂 くさのの麩」という正式な商品ブランドを掲げ、一つのブランドを確立させていく。

お麩のイメージと言えばやはり京都や金沢のイメージが強い。
大きな目標として創業100年の時に、京でもなく、金沢でもなく、「大阪の美味い麩」といえば、くさのの麩。
と思ってもらえるよう認知やブランド価値を高め、
日本のトップブランドとして名が広がっていくことをイメージし、ネーミングしました。

<コンセプトから繋がる「草野利休色」ブランドカラー>

日本の伝統色。利休色 りきゅういろ。
利休好みと呼ばれ、 茶人千利休(1522~1591年)が好んだと伝えられる緑みの茶色。
前述したようにお麩の原料でもある小麦粉は、「粉もん」としても大阪で親しまれてきた。
千利休の作っていた小麦粉をベースに作られた茶菓子は「麩の焼き」と呼ばれ、
その関連性からカラーインスピレーションが生まれ、色補正を加えくさのの麩オリジナルカラーと定義づけた。

<潜在意識へのアプローチ「くさのパターン」>



「くさのの麩」のもち麩をモチーフにしたパターンデザイン。
手ひねりで丁寧につくられているお麩を3つ並べ、文様にしました。
丸の統一感を保ちつつ、よく目を凝らして見ると実は少し不揃い。
これは機械ではなく、人間の手で丁寧に1つ1つ作られているというコンセプト
を込め、デザインしている。

<語らずともブランドを伝える名刺>



名刺の重要さは本サイトでも散々伝えてきている。
相応わしい名刺かどうか。その企業やブランドらしいかどうか。
その名刺が相手の胸に突き刺さるかどうか。紙質は「好きなものを選んでください」ではなく、
「くさのの麩」のブランドイメージや歴史、営業ツールとしての使いやすさなど、
全てを鑑みて紙のセレクトを行なっている。

<たった一枚の全てを語る写真>

美味しいお麩づくりとは。を語る写真。
1つ1つ手で伸ばして焼きに入る。いわゆる手延べ製法のお麩が一番美味いとされている。
グルテンを破壊せず、伸ばすのことで「モチモチ」で「小麦の味」をしっかりと感じ取れ、
煮料理の際にも「煮崩れしない」美味しいお麩が出来上がる。
この1枚の写真にはその「くさのの麩の全て」が詰まっていると行っても過言ではない。
ビジュアルアイデンティティ。ブランディングで大切な要素です。

<とけそうでとけない感覚を可視化したパッケージ>




















<印刷工房とのパッケージの色の細かい打ち合わせ>







<スーパー陳列時の見え方の調査>

パッケージデザインと人間の脳や感覚の反応をしっかりとデザインすることが重要です。
キャッチコピーである「とけそうでとけない、ふわっとしたお麩」をパッケージでどう表現するか。
故に、この袋を手に取った時の持ち心地は非常に重要で「お麩のふわっとさ」
出すために袋の触感を何度何度も検証し、1つの解を導き出した。

またスーパーに陳列した時も想定してデザインしなければならない。
実際に並んでいる様子を視察に行き、どのあたりがアイポイントなのか、
周りとの対比などを総合的に考えて、最終的にデザインをアウトプットする。

<自分たちの誇りを可視化したウェブサイト>

ウェブはきちんと世界観を詰め込むことが出来たらなら、全てを語り始めてくれます。
くさのの麩の老舗の歴史、魅力を余すことなく表現することで今まで伝えてなかったこと、
見えていなかったことが表面化され、新たな再評価を受けることが出来ます。

結果、新規取引の際に好印象を与えることになったり、既存顧客へのブランドイメージ向上だけではなく
その評価はインナーブランディングにも非常に有効

工場で働いている職人さんたちは自分たちのことを誇りに感じてもらうことが出来ます。
ウェブはチームとしての存在意義を示す集大成といっても過言ではありません。

<ふわっとしたまろやかな封筒>

淡い生成りの紙に、ロゴや文字の利休色が優しく溶けこむ封筒。
ブランドのキーメッセージである「お麩のふわっとさ」というポイントをズラさずに
手に触れた時の感触と同等の紙質をセレクトしました。質感が心地よく、ふわっとさを郵便でも届けます。

<作るべきは言語化された世界観>




世界観を徹底して作り込むこと。
それはお客様に選んでもらうための「究極の手段」です。
1.他の所との違いを明らかにし、
2.その世界観(価値)を独自で作り上げる事で
=自社のことを好きになってもらうこと。それがすなわち購入に繋がります。

百聞は一見にしかず。
いくら良いと口で伝えても人は納得してくれません。
だからこそ可視化(見える化)させて説明する必要があるのです。

<全員の意識を一つに>

制服とはいつの時代もオシャレであるべきだと考える。
それは働く意欲、帰属意識に大きく影響し、制服のデザインは目には見えない大きな役割を果たす。
なぜあれだけ自由なAppleが私服ではなく、制服を統一するのか。答えは簡単です。

<手に渡る瞬間こそデザインを>


たかがダンボール。されどダンボール。
ダンボールに拘るということは送る相手への心配り。
くさのの麩の拘りを配送というフェーズまで徹底的に。
取引がBtoBであろうとBtoCであろうと関係ありません。それがブランドイメージ構築に繋がっていきます。
ブランドをつくるということここまで徹底的に拘ること。
こういった細かいところで大きな差が出てきます。

<走るマルフ号>






マルフを背負いながら大阪の街を走る。
企業名と電話番号では芸がない。ここにも草野パターン。草野利休色。キャッチコピーと
ブランドの軸をずらさず一貫性のあるデザインを施している。

<百聞は一見に如かず>

今も昔も商いの原点は、マーケットシェアではなく「マインドシェア」。
市場を奪いに行くのではなく、お客さんの心を奪いに行くこと。
どれだけトキメクものを価値提供出来ているか。ゴリゴリの営業でシェアを奪うやり方は企業だけが潤うだけです。
其の為の映像。映像はマインドシェア力が非常に強いツールです。

<写真の良し悪しで100点にも30点にもなる>








株式会社桶屋では全てを社内で制作します。
こと写真撮影も一貫して行う。ブランディングのアウトプットで一番重要なポジション。
それが写真。ブランドを形成する上で一番大切な要素です。

どれだけ良いアイデアを出せたとしても、良いパンフレットのレイアウトがよくでも
写真の良し悪しで100点にも30点にも変わる。
もしブランディング会社と写真家が分かれていたら、写真家にその温度感を伝えなければならない。
簡単な伝言ゲームでも途中から崩れてくると言うのに、
思い描くブランド感をぴったりな温度感で撮れるはずがない。

写真とコンセプト、他のデザイン物との温度感を0.1度の狂いもなく表現することが究極のブランディングである。

<暖簾から醸し出る老舗の世界観>

最後の総仕上げ。例えばここに電飾の「くさのの麩」はどうだろうか。
またタンクに水を入れた土台に突き刺さった旗をパタパタさせてみてはどうだろうか。
今まで作り上げたブランド感が一気に崩壊するのは目に見えている。
何度も言いますが、大事なことは世界観を寸分狂いなく統一させること。
大工仕事でも1mm狂えば綺麗に収まらない。それと同じである。

また長暖簾の意味として、丈が長くすると来客を外から見えにくくすることや、
江戸時代、商店に上った客が品選びに「落着けるようにとの配慮」など、
「きめの細かい心配り」の意味もこの長さには含まれています。

時間を共にし、同じ釜の飯を食う













3年間というブランディングの期間を通して濃密な時間をクライアント様と過ごします。
打ち合わせをしている時間だけがブランディングではありません。
毎年社員全員が集まる新年会に招待いただけます。花見にも呼んでいただけます。
夏のバーベキューの時には社長がサックス、僕がアコーディオン、スタッフの林がトライアングル(?!)で
出し物をしたり、時には陶芸に行ったり、時にはヴィンテージカーを見に行ったり。
この時間こそが本当にお互いを知る時間であり、豊かな人間関係を構築しているのだと思います。


ビジネスライクで仕事をするのも良いでしょう。飲み会など断っても良いと思います。
しかしその関係で本当にクライアント様を理解できているのかなと思います。


根っこから携わるのがブランディングです。
時にはズバッと言いたくもないキツイ一言を言わなければならない時があります。
それはクライアント様の会社の未来を思うと仕方ありません。
クライアント様ご自身で薄々気づいてることなら尚更、耳の痛い話は聞きたくありません。
それはビジネスと言えど、人間だから当たり前です。
そこで信頼関係が薄いと「なんやコイツ会社のこともわかってないくせに!」「お前に言われたくない!」と
関係が悪くなるとそもそもブランディングなど成立しないのです。


柏手は片方の手では音は鳴りません。両方の手が合わさり「パンっ」と言う音が鳴ります。
僕たちはクライアント様のポテンシャルや遂行力を信じている。
クライアント様は僕たちの生み出すクリエイティブを信じてくれている。
このお互いの信じる力が無いとブランディングは絶対に中途半端になります。



これは綺麗事ではなく、過去の経験則から述べています。
だからこそどうすれば最高のブランディングになるのか。
良い結果が出せるパーセントを少しでも高めたいと思っています。


お互いが楽しみながら、心底で話し、悩み、時には笑い、時には泣き。
そんなデザイン事務所があっても良いんじゃないかと思っています。





草野食品株式会社様

所在地:〒531-0072 大阪市北区豊崎4丁目11番地3号
創業:1928年4月
従業員数:32名
http://www.kusano.co.jp/

【ブランディングプロジェクト】
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